MATH_ERROR(7) | Linux Programmer's Manual | MATH_ERROR(7) |
名前¶
math_error - 数学関数からのエラーの検出
書式¶
#include <math.h> #include <errno.h> #include <fenv.h>
説明¶
エラーが発生すると、ほとんどのライブラリ関数は (-1 や NULL などの) 特別な値を返すことでエラーを通知する。 <math.h> で宣言されている数学関数は、通常は浮動小数点値を返すので、 他の機構を使ってエラーを通知する。 エラー通知機構は 2 種類あり、 古いものが errno を設定するやり方であり、新しいものが fenv(3) で説明されている浮動小数点例外機構である。 (feclearexcept(3) と fetestexcept(3) を使用する。これらについては以下で概要を説明している。)
移植性が必要なプログラムで、数学関数からのエラーを確認する必要がある場合には、
数学関数を呼び出す前に
errno を 0
に設定し、以下を呼び出すべきである。
feclearexcept(FE_ALL_EXCEPT);
数学関数から返ってきた際に、
errno が 0
以外か、以下の呼び出しが
0 以外を返した場合
(fenv(3)
参照)、数学関数でエラーが発生している。
fetestexcept(FE_INVALID | FE_DIVBYZERO | FE_OVERFLOW |
FE_UNDERFLOW);
数学関数で発生するエラー条件については以下で説明する。
領域エラー (domain error)¶
領域エラー が発生するのは、数学関数に渡された引き数の値がその関数が定義されている 領域に入っていない場合である (例えば log(3) に負の引き数を渡した場合)。 領域エラーが発生すると、 数学関数は普通は NaN を返し (同じ状況で違う値を返す関数もある)、 errno に EDOM を設定し、「無効 (invalid)」 浮動小数点例外 (FE_INVALID) を上げる。
極エラー (pole error)¶
極エラー が発生するのは、関数の数学的な結果が無限大そのものとなる場合である (例えば 0 の対数は負の無限大である)。 極エラーが発生すると、その関数の返り値は (符号付きの) HUGE_VAL, HUGE_VALF, HUGE_VALL のいずれかとなる (前記の値のうちどれが返るかは関数の返り値の型により決まり、 それぞれ double, float, long double に対応する)。 結果の符号は、その関数の数学的な定義から決定される。 errno は ERANGE に設定され、「0 による除算 (divide-by-zero)」 浮動小数点例外 (FE_DIVBYZERO) が上がる。
範囲エラー (range エラー)¶
範囲エラー が発生するのは、関数の結果の値がその関数の返り値の型では表現できない場合 である。関数の返り値は、範囲エラーがオーバーフローであったかアンダーフロー であったかによって異なる。
浮動小数点のオーバーフローは、結果が有限だが、大き過ぎて 結果を返す型では表現できない場合に発生する。 オーバーフローが発生すると、 その関数は HUGE_VAL, HUGE_VALF, HUGE_VALL のいずれかを返す (前記の値のうちどれが返るかは関数の返り値の型により決まり、 それぞれ double, float, long double に対応する)。 errno は ERANGE に設定され、「オーバーフロー (overflow)」 浮動小数点例外 (FE_OVERFLOW) が上がる。
浮動小数点のアンダーフローは、 結果が小さ過ぎて、結果を返す型では表現できない場合に発生する。 アンダーフローが発生すると、数学関数は通常は 0.0 を返す (C99 では、指定された型において最小の正規化された正の値より大きくない 値を持つ実装定義 (implementation-defined) の値を返す、となっている)。 errno は ERANGE に設定され、「アンダーフロー」浮動小数点例外 (FE_UNDERFLOW) が上がる。
いくつかの関数では、渡された引き数の値や、正しい関数の結果が subnormal (非正規化数) になる場合に範囲エラーを上げる。 subnormal な値とは、0 ではないが、その値が小さすぎて (仮数部の最上位ビットが 1 となる) 標準形では表現できないような値である。 subnormal な値の表現では、仮数部の上位側のビットに 1 個以上の 0 が 含まれることになる。
注意¶
C99 と POSIX.1-2001 で規定されている math_errhandling 識別子は glibc ではサポートされていない。 この識別子は、2 つのエラー通知機構 (errno と fetestexcept(3) 経由で取得できる例外) のうちどちらが使用されているかを通知 することになっている。 標準では、少なくとも一つは使用されることが要求されているが、 両方とも利用可能であってもよいとされている。 glibc での現在の (バージョン 2.8 での) 状況はかなり混乱している。 ほとんどの関数 (ただし全部ではない) はエラー時に例外を上げる。 いくつかの関数は errno も設定する。 errno を設定するが、例外を上げない関数も少しだけ存在する。 どちらも行わない関数もごく少数だが存在する。 詳細については個々のマニュアルページを参照のこと。
errno と fetestexcept(3)
の両方を使ってエラーチェックを行うことで複雑になるのを避けるため、
多くの場合、関数呼び出しを行う前に不正な引き数かのチェックを行う
方法が推奨されている。
例えば、以下のコードは、
log(3) の引き数が NaN でも
(極エラーとなる) 0
でも
(領域エラーとなる) 0
未満
でもないことを保証するものである。
double x, r; if (isnan(x) || islessequal(x, 0)) {
/* Deal with NaN / pole error / domain error */ } r = log(x);
このページに書かれていることは、 (<complex.h> で宣言されている) 複素数関数にはあてはまらない。 一般に、C99 や POSIX.1-2001 ではこれらの関数がエラーを返すことを 要求してない。
gcc(1) の -fno-math-errno オプションを使うと、実行ファイルで、標準の実装よりも高速な数学関数の 実装が使用されるようになるが、 エラー時に errno が設定されない (gcc(1) の -ffast-math オプションを指定した場合にも -fno-math-errno は有効になる)。 このオプションを指定した場合でも、 fetestexcept(3) を使ったエラーの検査は可能である。
関連項目¶
gcc(1), errno(3), fenv(3),
fpclassify(3), INFINITY(3), isgreater(3),
matherr(3), nan(3)
info libc
2008-08-11 | Linux |